出会いってすごいですね

近年、10年以上愛用していたメルセデスの190Eの調子がすこぶる悪くなり、そろそろ買い替える時期なのかなと思い始めていた。

この車を買ったのが21歳の時、いかついイメージのベンツがそのまま小さくなったスタイリングは、まるでミニカーのような可愛さを逆に感じた。それに、ライトブルーとライトグリーンのメタリックという軽やかなボディカラーに「ベンツにこんな色があったのか」とたちまち魅了されて欲しくなり、そのままローンの契約を組んだ。結局選んだのはライトブルーメタリック。

当時は「分不相応な買い物だ」と、両親や周囲からずいぶん揶揄されたものだった。

自分の手足のように存分に乗った。
色々なところへ行った。
無茶な運転で、砂浜やぬかるみ、雪道にハマり込んだこともあった。

また、車に関する知識もほとんどなかったため、バッテリー液を補充しないで、すぐにバッテリーを駄目にさせてしまったりなど、高い授業料を払いながら車とともに一緒に学んでいった気がする。

最初は、若い女の子が背伸びして運転している感のあったベンツも、次第に持ち主に馴染み、世の中では2度のモデルチェンジを経ていて、いつしか「古い車を随分大事に乗っているね」と言われるようになっていた。
そして、何度修理工場で診てもらっても、エンジンキーを回してもすぐにはエンジンがかからなくなっていた。

「今度エンジンの調子が悪くなったら、買い換えた方がお得だと思います」

いつも修理をお願いしている工場の担当の方にそう言われ、知っているディーラーや業者の方が居なかった私は、どなたか信頼できる業者さんはいないかと訊ねてみた。
そうすると、「うちではこの方にしかお願いしていません」と、インターシテイの菅井さんをご紹介くださったのである。

菅井さんは、
「お客様に、ただクルマを買っていただくだけではなく、良い関係を築いて、ほんとうに喜んで頂けるクルマをお世話させていただきたいので、何でもご相談ください」
と仰ってくださったので、
「では、来年春くらいの買い替えを目処に……」と、その後はほんとうに色々ととりとめのない相談をメールで山ほどさせて頂いていた。

そんなさなか、残念なことに雨の日、190は追突されてしまい、そのまま廃車になってしまった。もう査定のほとんど出なかった車だけに、保険金が振り込まれた時に、「虎は死して皮を残し、私の愛車は保険金を残してくれたのね」と感慨深かい結果となってしまった。

なにはともあれ、乗る車がなくなったので、早急に探さねばいけない。

「車種とご希望を具体的に、絞っていただけたら・・」と菅井さんに言われ、

「う~~ん、プジョー406もスタイリングは好きだし、BMWのZ3も気になるんだけれど、実際乗ってみてどうでしょう~。アウディのTTは?? ほんとはニューモデルのベンツのCLKがいいんだけど予算が足りないし……。あと色は、白や黒は普通すぎてイヤなんだけれど、紺はオッサンぽいし、深みのある赤はいいけれど、明るいのはイヤ。カブリオレとクーペとどっちがいいかしら」

などと脈絡なく、いろいろな希望を言うたびに、
的確なアドバイスをくださる菅井さん。……コロコロ変わるので、よくうんざりしなかったものだと思う。私ならきっと怒る(笑)。

そうこうしているうちに3ヶ月が経ってしまった。駐車場代や保険代を払い続けているのが勿体無いのと、そろそろ車のない状態も耐えられなくなってきたので、菅井さんをせっつき出す私。良い出物があるたびにご連絡をくださるのだが、イマイチ私のツボにヒットせず。しびれを切らして、オークションや他の業者から買っちゃおうか
という悪魔の囁きが心の中に起こったりもしたけれど、中古の外車の買い物はいわば博打である。希望の条件で良い車に長く乗りたいもの。やっぱり菅井さんを信じて待とうと思ったのである。

そんな中、菅井さんから電話があった。

「今、オートオークション会場にいるのですが、BMWのMスポーツクーペで良い出物があります。色はシルバーで走行距離も少ないです。かなりの出物なので、場合によっては値段が少し上がってしまうかもしれませんが、どうですか、
検討なさいませんか? 逃してしまうと、なかなか出てこないようなクルマなので、かなりおすすめです。私も、買えるように頑張ります!」

確信を持った声に、実車は見てないけれど、お任せしようと瞬時に決断した。そして、次の週めでたく納車されたのである。

「まだ新車の香りが残り、固い感じすらある車です。人間にたとえるなら”若い男の子”でしょうか。どうぞ、どんどん乗ってあげてくださいね」

という菅井さんの言葉どおり、同じドイツ車でも、ベンツとは全然違うテイストの乗り心地を楽しんでいる。
乗れば乗るほど、新しい発見があり、好きになっていく感じだ。

たった1台の車を買うのに、こんなにワクワクさせて頂いた菅井さんとは、その後も様々な相談に乗っていただいている。